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永峰潤ブログ
永峰・三島会計事務所、かなり不定期な所長のブログ。

まだ時価会計やるの

もう時価会計やめたら!!

私は時価会計についてはずっと懐疑的であり、どこかの大学の先生のように、近い将来に転向宣言して免罪符を手にする気は毛頭ありませんし、これからも機会あるごとに時価会計の問題点を提起していきたいと思っています。今回は時価会計の問題点を考えさせる実にいい話題がありましたのでご紹介します。


サブプライム問題をきっかけとして、米国主要金融機関が未曾有の赤字を記録し、米政府が金融機関の国有化を進めたというのは、つい先だってのことだったはずです。それが今週(4月20日の週)の新聞では、一転してCitigroup、バンクアメリカ、JPモルガン等々が次々に第1四半期に黒字決算を記録し、一体全体どうしてそんなことになったのかという疑問を持った人は大勢おられるのではないでしょうか。

巷間では米国型金融資本主義の終わり、今後もCDSの破綻による負の影響は計り知れない等々の記事がでている一方で、その尖兵たる投資銀行がどうして黒字転換できたのか誰しも不思議に思うはずです。

最近の会計、とりわけ時価主義会計は会計本来の役割を超えて、間違った方向へ向かっていると思っていましたので、今回のこの新聞報道についても、私は絶対に会計にその一因があると考えていましたが、詳しく調べる時間もないのでそのままとしていました。 

そういう状況の中、4月20日のNew York Timesに私の疑問に答えてくれる記事が載りました。後追いで4月23日の日経新聞にも分析記事がでていましたが、これは本家取りですので、少し長くなりますが新聞報道を要約してみます(実際はInternational Herald Trinbuneの同日記事から)。

「Citigroupは2009年第1四半期で16億ドルの当期純利益を計上した。 不動産ローンや産業全体の事業利益がやや回復基調にあるものの、銀行の黒字決算自体は現行の会計原則で認められている方法を採用することによって可能となった。

この決算について著名なアナリストであるMeredith A.Whitney女史は「とんでもない粉飾決算である。 黒字決算を行うことは業界と一部の政治家の目標である - 個人投資家に対しては銀行の経営は落ち着きを取り戻したので投資対象として大丈夫との印象を創り上げ、国民に対しては新たな税金を投入する必要がなくなっている - という思惑で一致したのだ。」というようなコメントを述べている。

女史から粉飾決算と決め付けられた会計手法(筆者注:この方法は米国金融機関のロビーイング活動により先月から米国会計で認められた会計原則となった)は、credit value adjustment (信用価値修正)というものである。 この会計処理でCitigroupは27億ドルの利益を積み上げることができた(筆者注:この処理がなければCitigroupは実質赤字)。

具体的には以下のような処理を行った。Citigroupの社債は自行の信用不安から社債市場での時価が著しく下落しているが、本会計原則によるとCitigroupが社債市場から社債を時価(発行価額を大幅に下回った価額)で買い戻すと仮定すれば、理論上、その差額分を帳簿上の利益に計上しても構わないというものである。実際にはCitigroupは社債を買い戻していないが利益は計上されている。

CitigroupのCFOであるEdward Kelly氏は負債に時価主義を採用する会計処理は実務上認められたものであり、この会計処理のみを取り上げて問題とするのはアンフェアであるとしている。

(以上、関係する部分を抜粋しました)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この記事から多くのことを考えさせられました。

アメリカはいつからこんなにも自浄作用が働かない国になってしまったのでしょうか。

私に言わせれば、こんな事態は借金にまで時価主義を適用するという暴挙によって当然に引き起こされることが予想できたのであり、こういう信じられない会計処理を世界でもっともオツムがいいと自称しているアメリカの優秀な大学を出た専門家達がルール化することが信じられません!

会社の業績が悪くなったので自社で発行している社債の価値が落ちた。その社債を買い戻したとしたら発行価額以下で買い戻せるので差額分は利益計上してもよい。子供が考えたって、そんなロジックがおかしいことは明白です。

これは会計の話ではなく、社会の規範として、借金をしている人がその借金を返せるあてがなくなった、ならばそれによって借金を全額返さなくてもよいのだ、つまり返さない分はぼろ儲けだね(法律的な論議は別です)。 こういう極めて倫理観に欠如した考え方を社会の公器ともいえる銀行が大手を振るって実行することの片棒を会計が担ぐことを、もはや米国の会計士はおかしいと思わなくなってしまったのでしょうか?

こんなことを許す時価主義は一刻も早く止めるべきです。

再論します。 重要なのは米国で会計原則に係わっている人たちの職業倫理観の欠如です。 一体、彼らは誰のために会計原則を作っているのでしょうか。 一部金融機関の利益の為のみにこんなインチキな会計原則を流布させれば、いずれその何倍もの規模で本当の危機(アメリカという国家のデフォルト)がやってくるかもしれないことは誰の目にも明らかです。彼らはその時になってどういう言い訳をするのでしょうか。

もう一つ思うのは時価会計の考えはもう実質的には破綻しているのではないかということです。時価主義の総本山であるIASB(の一部の委員)とIFRSについては講を改めてじっくり書こうと思っていますが、今回この会計処理を巡って思うことは、もはや誰も米国の金融機関の現実の財政状態がわからなくなってしまった!ということです。

昔の(といっても、つい10年位前の話ですが)原価主義の会計ルールのもとでは、本業の利益がその企業の実物大の営業成績を反映する鏡でありましたし、現にそのルールが原則的に500年近く続いてきたわけです。 それが時価主義の進展とともに、架空の利益(DCFによるまやかしのキャッシュ・フローと将来予測なる分かったような分からないような概念)と現実の利益が虚実入り乱れてしまい、いまや誰も何が本当の利益を現しているのか分からなくなっているのではないでしょうか。

その証拠に今回、米国金融機関が黒字決算と報道されても市場、いや個人投資家の反応は冷ややかではないでしょうか(G20や国際経済情勢を見ていれば、これは作られた虚の利益であり、実際の利益であるはずがないと市場参加者が判断しているからでしょう)。

それに加えてIFRSは更なる暴挙として現在広く使われている当期利益概念を放棄して包括利益なる概念に利益概念を変えようとしています。このことも別の機会に書きますが、いずれにしても今までの人類の英知の成果たる会計の歴史を一顧だにしない、学者が頭で考えただけの独りよがりの概念に思えてなりません。

結局こうなるとキャッシュ残高の対前期比較だけが、本当に信頼できる情報なのではないでしょうか・・・・・現在の行き過ぎた時価主義の下では。
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【2009/04/23 16:56】 未分類 | トラックバック(0) |

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