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永峰潤ブログ
永峰・三島会計事務所、かなり不定期な所長のブログ。

IFRSは未来に対する情報を記載

前回に引き続き、以下に最近、雑誌で口述しました会計士向けのお話を何回かに分けてご紹介します。

第1回

IFRSは未来に対する情報を記載
 国際財務報告基準(以下IFRS)が導入されることで、どのような影響があるのか、私の考えをお話ししましょう。

 端的に言えば、「会計の仕組み」がまったく変わってしまうということです。なぜならIFRSは、既存の会計学の枠を超えた、ファイナンスやミクロ経済学、統計学等にまたがる学際的なアプローチに根拠をおく、全く新しい会計基準であると言えるからです。
 今までの会計とIFRSとの違いを見てみると、今までの会計は、『過去』を指向しています。つまり過去に起こったことを記録しているものです。反対にIFRSは、『未来』に対する情報を記載します。つまりこの2つの会計基準は、「情報の見方」がまったく異なっているのです。ですから、単に「会計の基準が変った」で済まされるものではない、と私は考えています。

 それは先日、日本公認会計士協会にIASB(国際会計基準審議会)の15人のメンバーの一人でスタンフォード大学教授のメアリー・バースさんがいらして講演を行ったその内容からも、うかがい知ることができます。そこで彼女が何を話されたかというと、結論的には「IFRSは今までの会計とまったく違うものだ」ということです。そしてそれは、「会計学の体系すら変えてしまう」ほど大きなうねりであると語られたのです。

 IFRSは、「今までの会計という枠組みの中の基準が変わった」というものでは決してありません。会計の概念自体が全く異なるものなのです。このことを、会計士のみなさんはまず理解しておく必要がある。そう私は思っています。

会計の利用者が替わった
 では、なぜそこまで概念に差が出てしまったのか。ひとことで言えば、「会計の利用者が替わってしまったから」です。

 もともと会計は過去に行われたことを正しく記録し、成果を分配するためのものでした。会計の目的はそこにあったのです。15世紀から21世紀の今日まで、私たち会計士の仕事は、そのフレームワークをベースに行われてきました。過去の歴史を辿ると、一時的に時価会計を使ったこともありましたが、会計の本質は変化せずにきたのです。

 IFRSにつながる変化の兆しが少しずつ現れはじめたのは、20年くらい前からです。それまでは世界の中でも米国を別にすれば、我が国でもそうであるように間接金融が主流だったのですが、直接金融が台頭してきました。ご存知のように、間接金融は銀行を介して資金を融通しあうシステムであり、大陸系ヨーロッパや日本でみられた資本主義のスタイルです。そこでは商業銀行が大きな役割を果たしていました。

 一方、直接金融はアメリカ的な資本主義といえるでしょう。アメリカ自体、沿革的に金融資本が脆弱であり、19世紀から20世紀にかけて、ヨーロッパから資金を調達してきて事業を興し、いろいろな財閥が生まれました。そのときに大きな役割を果たしたのがウォールストリートの投資銀行です。直接金融により、投資家と企業とが直接結びつく資本市場ができたのです。 

 この直接金融が、ベルリンの壁、ソビエト連邦の崩壊に端を発するグローバリゼーションの波に乗り、アメリカ的金融資本主義として世界中に輸出されました。同時にそこで活躍する投資銀行の力がこの20年間でかなり強くなったのです。そして、このような資本主義の伝播者として米国ビジネススクールMBAが果たした役割は無視できません。 直接金融をベースにした資本主義において大事なものは、株主であり投資家です。では、投資家や株主は何に興味があるのでしょうか?過去の数字に興味はあるでしょうか?

もうお分かりだと思いますが、投資家や株主は『過去』に興味はありません。みな『将来』しか見ないし、『将来』にしか興味がないのです。投資家が必要とする情報は、『将来価値』です。そこに尽きます。過去ではなく、これから株価がいくら上がるかが大事なのです。そのために有用な情報を提供しようと作られた会計、それがIFRSに他なりません。私はそう考えています。

続く
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【2009/07/21 16:27】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRS

最近、久し振りに新しい本を上梓しつつあります。

内容はIFRSに関するものですが、主たる内容はいわゆるIFRS個々の会計原則についての説明でなく、IFRSが生まれてきた経済的背景やIFRSが従来の会計とは全く違うということを解説した、自分で言うのもなんですが、かなり斬新な内容の本になる予定です。

この題名ですでに三回ほどセミナーを行いましたがご好評をいただいたこともあり、ぜひとも早く出版化したいと思っております。

今日はこの本のはしがきと目次の部分をご紹介したいと思います。これだけでも内容について予測していただけると思います。



はじめに

この本は大学で会計学を学んでいる学生、会社の経理部勤務の方、そして何よりも会社の経営者やCFOの方を対象に、IFRS(国際財務報告基準)誕生の背景やIFRSの考え方をできるだけ分かり易く解説したものです。

筆者は過去30年間、会計の専門家として実務に従事してきましたが、最近の会計を巡る世界の流れを観察していると、会計学は現在、大変な転換期に差し掛かっていると強く確信しています。

たとえて言うならば、過去2000年にわたって用いられてきたアリストテレス論理学が、ここ100年間で記号論理学に変わってしまった、IFRSはそれと同程度のインパクトを従来の会計に与えつつあると言えます。

具体的に説明しましょう。

もしも、この本を手にしたのが大学1年生だった場合、彼らが卒業する3年先には、入学した時に学校で習った会計知識だけでは実務で役に立たなくなる可能性が非常に高いと思っています。

今後、会計という職業に従事する人は、伝統的な借方・貸方の会計学を学ぶことに加えて、ファイナンス、ミクロ経済学や統計学等の、今まで会計学の範疇に入ってなかった学問を勉強することが必須になるでしょう。
更に言うと英語が不可欠な学問になる可能性も大いにあります。そういう意味では、英語が嫌いな人は、これからは会計を志すのは止めた方がいいかもしれません。この先、英語ですごく苦労することになると思います。

理由を言いましょう。

それは1989年のベルリンの壁、1991年のソビエト連邦の崩壊から始まった東西冷戦構造の終結とグローバリゼーションに密接に関係しています。

詳しくは本論でご説明しますが、簡単に言えば世界の経済活動がより一体化し、共通の尺度で測られる要請が飛躍的に高まったことに起因しています。

今、我々、公認会計士や会計学者は、来るべき会計の将来像とそのインパクトの大きさについて実感のない人が大多数です。

その主たる理由は、我々が日本語という言葉の壁に守られ(実は外部の情報を遮断するという諸刃の剣でもあるのですが)、しかし、未だに侮りがたい世界有数の経済力があるため、グローバリズムの影響度合いが他の諸外国に比べると少なく、日本語言語で会計を行っていても何とか成り立っていたという歴史的現実があるからだと思います。

人間は元来保守的な動物です。できれば今のままでいたい、環境の激変にわざわざ身を晒したくないというのが本能でしょう。

ところが、現実は、グローバリズムの予想外に高スピードの進展により、世界中の人々が米国発金融資本主義の枠組に英語という言語体系を介して組み込まれています。

この結果、世界で一つだけこの流れから取り残されようとしている国がでてしまいました。 そう、我々の国、日本です。

世界は急速に英語という言語を用い資本主義という共通の経済原則での競争をすでに始めています。現在はアメリカ型金融資本主義の過度の行き過ぎに対してブレーキがかかっていますが、まだ我々人類は資本主義に代わる社会経済的フレームワークを構築しておらず、このことをもって資本主義の枠組そのものまで否定されるという動きにはまずならないでしょう。

それにもかかわらず、我々は日本語と過去に蓄積した経済力という2つの壁に守られて、いまだにそのような世界の潮流からあたかも忘れ去られたような存在となっているのです。

いずれ、ことの重要性に気がつき大急ぎで追いかけるでしょうが、それが5年先ではかなり差がついているでしょう。

筆者は仕事柄、世界中の人々と会計を通じて話し合う機会に恵まれていますが、最近、驚くのはクライアントの方々で英語を話す方が以前よりも飛躍的に多くなりました。その中にはフランスのように以前は最も英語を話さなかった人たちもいます。ロシアも英語話すようになりました。 アジアの人々は英国の植民地という歴史的な経緯もあってみんな英語が上手です。

これは会計の本であって英語の本ではありませんが、実はIFRSを勉強するということは、英語ができないと最終的には限界がでてきてしまうのです。

この本はそういう状況を皆さんにお伝えし、一刻も早く来るべき新しい会計に備えて貰いたく執筆しました。



目 次

第1部 IFRS誕生が促された経済的背景

1  命題 従来の会計は過去指向型、IFRSは未来指向型
2  従来の会計の歴史
3  従来の会計の中心概念
4  グローバリゼーションとアメリカ型金融資本主義
5  アメリカ型金融資本主義伝播の歴史
6  ストック・オプション
7  株主価値とは何か
8  財務諸表利用者の要望の変化
9  株主が知りたい情報とは
10 株価とは
11 キーコンセプトとしてのディスカウントキャッシュフロー
12 IFRSに担わされたもの
13 命題 従来の会計は過去指向型、IFRSは未来指向型


第2部 IFRSとは

1 IFRSのめざすもの
2 IFRS設定団体のストラクチャー
3 IFRSフレームワーク
4 IFRSの特色
5 MOUとは
6 負債の時価評価
7 日本はどう対応すべきか


第3部 各 論

IFRSと日本基準の主たる相違点

【2009/07/06 17:09】 未分類 | トラックバック(0) |

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