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永峰潤ブログ
永峰・三島会計事務所、かなり不定期な所長のブログ。

国際会計基準という誤訳を巡って

今年に入り、一般の会社におけるIFRS導入ブームはいよいよ火がついたようになってきました。 大きなビジネスチャンスであるとばかりにBIG4、ソフトウエア会社、その他コンサルティング会社が船に乗り遅れるぞとばかり煽っているように思えてなりません。

私の事務所も上場中堅企業様向けのIFRS導入のお手伝いをするプロジェクトをスタートさせておりますが、今日は、IFRS=国際財務基準であり、国際会計基準とは決して訳すべきではないということを書いてみます。

Coquille St. Jaques、帆立貝のことをフランスで言うとこうなるそうです。 女性の方はフランス料理で有名なのでご存知の方も多いと思います。ちなみに英語だとSt. Jame’s scallopです。普段われわれ日本人は帆立貝を見ても、あぁ貝の形が帆立みたいだからそういうのね位の感想しか持てないのですが、これがフランスやイタリア、スペイン、英国の人が帆立貝を見ると、そこには、どうも違う意味合いが連想されるように思えます。

フランス語で説明すると、これは聖ヤコブ(フランス語ではジャック)の貝という意味になります(英語ではジャックがジェームスになるので、やはり意味は同じ)。

では聖ヤコブとは誰かと言うと、このお方はキリスト12使徒の一人で、ヨーロッパ人にとっては、スペインのサンチャゴコンポステラに祀られている人として余りにも有名です。

そうして中世以降、彼の地サンチャゴを目指して、ヨーロッパ各地から巡礼の旅が行われるようになった折、目的地のサンチャゴが海岸に程近いので、そこで獲れる帆立貝の貝殻を首からぶら下げるようになりましたが、ほどなく、巡礼者は往路にあっても帆立貝の貝殻を首からぶら下げるようになり、そこから帆立貝の貝殻を首からぶら下げている人は、サンチャゴへの巡礼者であるということとなったそうです。

あたかも「同行二人」の金剛杖を持っているお遍路さんと同じですね。

つまり同じ帆立貝を見ても、日本人とヨーロッパ人では、それに対する感慨というか意味合いが全く変わってくるということです。 事はキリスト教の問題ですので、別に帆立貝は帆立貝のままでよく、「聖ヤコブの貝」と改名する必要性は全くないのですが、これが「国際会計基準」と誤訳を続けている今の風潮は、重大なミスリーディングを生じかねない蓋然性大だと思うのです。

IFRSの設定団体であるIASBは2001年に設立され、それ以前のIASを承継し、あらたにIFRSとして一連の会計基準を公表しています。 ここで私が注目しているのは、IAS=International Accounting Standards(国際会計基準)を、何故IFRS=International Financial Reporting Standards(国際財務報告基準)に変更したかということです。

この点に関する私の考えは、すでに今までのブログにも書いていますし、又、近々、上梓予定の本にも書いていますが、簡単に言えば、IFRSはDCFと時価主義を基本概念とする、直接金融における投資家を主たる利用者とする未来指向の会計基準であり、それは、いままでの取得原価主義と期間損益計算を基本概念とする、利用者を特定しない過去指向型の従来の会計基準とは全く異なったものである。 別の言い方をすれば、IFRSはその学問的にコアな部分を(会計ではなく!)ファイナンスに置いており、もはや従来の会計原則とは全く趣を異にするものである。 こういう内容を反映するものとして、(おそらく)IASBはいままでのIASからIFRSに名前を変えたのだと推測されるのです。そうでなければ、長年親しんできたIASの名称変更をわざわざ変更する必要もなかったのではないかと思えるのです。

つまり、本家では、IFRSという今迄の会計とは異なった、新しい会計基準(いやむしろ会計基準という言葉自体も厳密には正しくないのかもしれません)を設定していく、その故に「国際財務報告基準」という言葉を、わざわざ会計の語を捨て去ってまで使用したのに、我が国では、当初は「国際財務報告基準」という正しい訳語が当てはめられていた事例もあったのですが、なぜか最近は明らかな誤訳である「国際会計基準」が用いられているようであり、これだと、言葉の奥にある本当の意図が(日本語の誤訳のために)完全に見えなくなってしまいます。

大新聞社やその他関係者の方には、是非とも「国際財務報告基準」という正しい訳語を使うよう一刻も早く改めてほしいと切に望む次第です。
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【2010/01/18 17:16】 未分類 | トラックバック(0) |

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