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永峰潤ブログ
永峰・三島会計事務所、かなり不定期な所長のブログ。

IFRS誤訳再び


 IFRSは、2010年3月期から、日本の上場企業の連結財務諸表への任意適用が認められ、金融庁のロードマップでは2012年に適用か否かの最終判断を下し、2015年から、アドプション(強制的用)という予定になっています。

 IFRS導入が新聞、雑誌等でかまびすしく叫ばれている昨今、記事を読んでは「何とかしなければまずい」と、そわそわ落着きを失っている方が大勢いらっしゃると思います。

 まず初めに、私がお伝えしたいのは「惑わされないこと」です。IFRSに関しては様々に言われていますが、適応の最終判断は3年先で、細則はまだ決っていない状況です。出版社・新聞社、大手監査法人からそれぞれのノウハウ本が出されていますが、本質が何かを捉えなければ、メディアに躍らされるだけになってしまいます。もう一つ注意したいことは、日本の大手監査法人の視点は日本人の視点でありそうでいて、実は提携先であるビッグ4の視点、つまり欧米側の視点であったりするということです。

 企業の財務会計を根底から変えなければいけないIFRSをなぜ導入しなければならないのか。私たち日本人の意見は余り反映されずアドプションされるのは何故なのか……考えれば考えるほどおかしな話です。

 IFRSがやって来るから大変だ、と騒ぐ前に、適応の最終判断まで時間がある今だからこそ、これまでの日本の会計基準やUSGAAP等と何が違っているのか、本質を捉えてみるべきではないでしょうか。

 ここではIFRSに関する重大な誤解についてお話しします。 IFRSはInternational Financial Reporting Standards (国際財務報告基準)であり、その名前にはどこにもAccountingの文字は出てきません。それにもかかわらず日本の新聞、雑誌等では既に国際会計基準の訳語が定着してきた感があります。しかしながら国際会計基準とはもともとIAS=International Accounting Standardsの訳語であり、IASとIFRSは別物です! これにも関わらず、どういう経緯かわかりませんが、IFRSが国際会計基準の訳語として用いられることは大きな問題を含んでいると考えています。これは何気ないことのように看過されてしまうことかもしれませんが、私は大きな問題をはらんでいると思っています。

 今、一つの例え話をします。

ヨーロッパでは帆立貝のことを「聖ヤコブの貝」といいます。フランス語では
Coquilles Saint-Jacques, 英語ではSt.James Scallopです。なぜこのような呼び方をするのだろう。興味があって調べてみますと、こんなことがわかりました。キリスト12使徒のひとり聖ヤコブの骨が漂着した地であるスペインのサンチャゴ・コンポステラは、中世からヨーロッパ人の聖地巡礼の目的地として有名です。 ここは海岸に程近く帆立貝が豊富にとれるので、サンチャゴに到着した巡礼者は帆立貝の貝殻を巡礼の記念に肩からぶらさげるようになったそうです。 時代を経るにつれて帆立貝を身につけることは、いつしかサンチャゴ巡礼者のシンボルとなり、この旅行者を見かけると途中途中の寺院や宿院ではそれなりの扱いをしてくれるようになったそうです。 丁度お遍路さんのいでたちをみると四国の人が歓待してくるのと同じ感覚なのでしょうね。

私が言いたいのは、ヨーロッパ人(とりわけフランス人)にとっては聖ヤコブの貝=サンチャゴ、というように、ある言葉にはその言葉のもつ意味が直接的に理解されるものがあるということです。 もちろん、我々日本人にとっては帆立貝は帆立貝であり、別に聖ヤコブの貝であろうがなかろうが関係ないわけですが。

で、IFRSに戻りますと、IFRSの基準設定団体であるIASB(International Accounting Standard Board)は、わざわざ従来IASと名づけられていた原則をAccountingが全く入らないIFRSに変えたわけであり、そこには明確な理由があったわけです。その理由はまた別の機会にお話しますが、いずれにしてもIASBは、IFRSを採用することによって、「我々は、今後、会計基準でなく財務報告基準を設定していきます。」そういう強いメッセージ性を込めてIASからIFRSに変更したことは想像に難くありません。

それなのに、あぁそれなのに、それなのに・・・・・・

日本語では未だに国際会計基準という言葉を、原語が変わったにも関わらず、依然として間違った訳語を使い続け、一般の人たちに大いなる勘違いと混乱を惹起させてしまっているのです。IFRSを会計基準と訳してしまっては、この体系の持つ真の意味がわからなくなってしまうのです。

言葉のもつメッセージ性を厳密に解釈して、ちゃんとした翻訳語を充てないと、結局、同じことを巡っても日本人と欧米人との間で前提となる共通認識が生まれてこない危険性を強く危惧しています。


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【2010/04/07 14:23】 未分類 | トラックバック(0) |

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