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永峰潤ブログ
永峰・三島会計事務所、かなり不定期な所長のブログ。

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第6回

Q7 ファイナンスと会計学は、学問の領域が違うのですか。

 ビジネス・スクールでは、ファイナンスと会計学、ともに必須科目とされていますが、この両者は昔から相容れない関係と言われてきました。

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 ファイナンスの対象領域は企業財務(コーポレート・ファイナンス)、投資(インベストメント)、資本市場(キャピタル・マーケット)の大きく3つに分かれています。
 直接金融システムにおける投資家の意思決定を説明する分野は、主として投資と企業財務です。
 個々の内容については深く立ち入りませんが、ファイナンス理論で投資を考える際には、NPV(正味現在価値)が理論の中心に位置しています。CAPM(キャプエムと言います)、WACC(加重平均資本コスト)、MM(モジリアーニ・ミラー)理論、企業価値等のファイナンスの主要な理論はすべてNPVをその前提知識としているといっても過言ではありません。
 NPVとは、簡単に言うと、プロジェクトの初期投資額(A)とプロジェクトが生むと予想される将来のキャッシュフローの現在価値の合計額(B)を合計して、NPV=(A+B)>0ならば投資すべき、とする考え方です。

 NPV=FCF0+(A0)+FCF1/(1+r)+FCF2/(1+r)2・・・+FCFn/(1+r)n(B)

 このようなNPVによる投資決定理論に対して、会計学でも、別途投資決定の道具を用意しています。例えば、回収期間法(Pay Back Method)やROI(Return on Investment)です。
 回収期間法は投資金額が何年で回収されるかを調べ、その期間がガイドラインとなっている期間よりも短ければ投資を実行する、という評価方法です。
 ROIは、会計上の利益を投資額で割って、プロジェクトの収益率から投資判断をする方法です。
 回収期間法は必ずしも会計上の方法とは言えませんが、これらの方法を用いると、NPVと異なる結果がしばしば現れ、しかもビジネスの現場では操作の容易なことから、これらの方法が多く用いられて来ました。
 このように、会計学とファイナンスはそのアプローチの仕方が異なるために、企業の経済活動を観察・分析するに際し、まったく違った結論が導き出され、双方で学問的な軋轢が生じていたのです。その代表的な例が、会社の価値に対する考え方です。

 この点は次回にご説明します。

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【2010/09/24 12:38】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第5回

Q6 アメリカ型金融資本主義の台頭が、従来の会計の終焉の引きがねとなった経緯を教えてください。

 この質問のテーマを考えるには、やはり歴史的背景を知るのが近道でしょう。
 第二次世界大戦後に起きた、世界的に最も特筆すべき出来事は、1989年のベルリンの壁崩壊と1991年のソビエト連邦崩壊による社会主義体制の瓦解、結果として世界の経済体制がごく一部の例外を除き、資本主義に収束したという歴史的事実でしょう。
 また、偶然の一致かもしれませんが、ちょうど同じ1980年代に米国型ファイナンスという学問が台頭し、ついにはそれが金融工学という形でウォールストリートの投資銀行を中心に、実態経済をも凌駕するようになりました。


私はアメリカのビジネス・スクールを1986年に卒業しました。その時、日本の大手証券会社から来ていた証券マンが、「証券会社といえども、日本はまだ単利計算が主流で複利計算はポピュラーではない」と言っていたのを覚えています。 つまり、当時の日本ではまだ複利計算は一般的な計算方法ではなかったようです。何故なら必要がなかったからに他なりません。
 当時の日本の銀行は、今よりもずっと強固で、政府系金融機関や長信銀ががっちりとドライビングをかけて経営者にお金を貸すような、「強い日本の金融」でした。そこでは、アメリカ型ファイナンスは、まだそれほどポピュラーではありませんでした。
 それが、わずか30年であれよあれよという間に覇を唱えるようになり、中心となってきたわけです。これと符牒を合わすこととなったファイナンスという学問はとても若い学問で、アメリカでもビジネス・スクールを中心に広がってきたのは、ここ最近30年位でしかありません。

次回はファイナンスと会計学の違いを考えてみます。
【2010/09/17 10:35】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第4回

Q4 過去志向型の会計の特徴を教えてください。

 過去指向型の会計を会計用語によって特徴づけるならば、「期間損益計算」と取得原価主義」がキーコンセプトと言えます。
 期間損益計算は前述の通りですが、大事なのは、もう一つの取得原価主義です。取得原価主義は、取得した資産は売却しない限り、取得時の原価のままで計上しておくのが原則です。例え含み益が見込まれても、逆に含み損があったとしても、まったく関係なく、取得原価、買った時の原価で計上するのです。

つまり、買った時の原価で計上し、それを一航海基準で期間損益するという、期間損益計算が複式簿記の中心概念です。
 そこで重要とされたのは、正確性です。言い換えれば、元来会計というのは将来のことを書く必要は全くなく、過去の事実を正確に記録し、そこからあがった利益をきちんと分配するものでした。これが従来の会計が過去指向型の会計だといわれる所以です。
 そして最も重要なのは、この会計のフレームワークが、経済実態を記録する唯一の方法として、実に500年間の長きに亘りずっと維持されてきたという現実なのです。


Q5 従来の会計はどうして駄目になったのですか。

 500年もの間、続いてきた従来の会計のフレームワークが、なぜ、IFRSに変わらなければならなかったのでしょうか。もちろん、そうなるには必然の理由がありました。これもやはり社会・経済情勢の変化に多いに関係しています。
 前述のように、これまで私たちが習ってきた会計、そして今、現役の学生たちが勉強している会計も、期間損益計算と取得原価主義が2つのキーコンセプトです。
 そのフレームワークが、ここ20年間でアメリカ型金融資本主義が世界の経済・金融システムの主流となったことにより、パラダイムシフトを迫られたのです。
 もっと直接的にいえば、投資銀行を中心とした直接金融システムが、日本や大陸ヨーロッパで主流であった間接金融システムに取って代る事になり、その結果、会計も変容を迫られました。つまり、直接金融における資金の出し手たる投資家が必要とするものに、会計が変容しなければならなかったのです。
 ですから会計だけが変わったのではなく、グローバリゼーションによるアメリカ型金融資本主義の全世界への伝播が各分野に影響を及ぼし、その中で会計側の回答が、500年間続いた従来の会計の終焉とIFRSの台頭を促したと考えられます。

次回はアメリカ型資本主義が資本主義の中心となった理由を考えてみます。


【2010/09/10 15:24】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第3回

 塩辛い臭みを消すために使われた香辛料。それは胡椒です。
 胡椒は臭い消し、あるいは殺菌・抗菌作用もある植物として珍重され、貴重品として高値で取り引されていました。冷蔵技術未発達の15世紀当時、胡椒のおかげで食肉の長期保存が可能となったのです。
 当時も今も、この胡椒の産地はマラッカ諸島(現:インドネシア)です。


15世紀には、インドネシアから胡椒がキリスト教の5大聖地の一つ、エジプトのアレキサンドリアに運ばれ、ここからヨーロッパ各地へと荷を積み出しました。この時、その覇権を競ったのがベネティアとジェノバでした。
 塩野七海さんの「海の都の物語-ベネティア共和国の一千年」にも記されていますが、最も強く、最も稼いだのがベネティア商人です。彼らはベネティアからアレキサンドリアまで航海し、胡椒を船積みしてベネティアまで戻り、陸上げしました。そこからフランスやドイツの商人によって、ヨーロッパ全土に胡椒が行き渡る事になったのです。
 この胡椒取り引きでベネティア商人が巨万の富を得たことは、想像に難くありません。そして、この取引を記録する際に用いられた金銭収支の帳簿記録方法が「複式簿記(Book Keeping)」と言われています。
 取引を貸方と借方に分解して記録する複式簿記の淵源は、まさにこの時期にまで遡ることができるのです。
 当時の会計をおさらいすると、「ベネティア→アレキサンドリア→ベネティア」という一航海期間での損益計算が行われていたことになります。したがって、ここでは一航海期間を一会計年度として、「期間損益計算」を行っていたのです。



 会計期間は、国家の税収入との兼ね合いから、現在では一暦年を一会計年度としていますが、当時はまだ税収もなく、あくまで一会計期間(=一航海期間)におきた過去の取引事象を正確に記録して損益を計算し、利益を分配することが、最重要課題だったのです。その意味から、従来の会計は過去志向型と言えるのです。

 このことを財務諸表の重要性の観点から見ると、損益計算書(P/L)が上位概念としてあり、その下位概念に貸借対照表(B/S)が位置します。そして横にあるキャッシュフロー(C/F)は、実はここ20年位でキャッシュの必要性が叫ばれたために加えられました。
 後の話にも関連してきますが、私が公認会計士2次試験を受けた30年前にはこのC/Fのような概念はありませんでした。C/FはP/L、B/Sの体系に後からくっついた体系であって、基本は損益計算書(P/L)が重要で、それを支えるものとして貸借対照表(B/S)があります。
 
 
 ベネティア商人が目指したように、過去に起きた事象を複式簿記で正確に記録し、損益を計算することが従来の会計の目的であり、その意味からも過去志向型と言えるのです。
 
 次回は過去志向型の会計の特徴を考えます。


【2010/09/03 11:00】 未分類 | トラックバック(0) |

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