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永峰潤ブログ
永峰・三島会計事務所、かなり不定期な所長のブログ。

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第11回

Q15 株主の知りたい情報とは、具体的にどのようなものでしょう。

 アメリカ型の金融資本主義には、色々な定義があるようですが、今までの議論の整合性を考えたものとしては、企業の経済活動が株価の価格政策を第一義的企業目標として設定され、企業の実態活動が金融によって律せられている資本主義を指していると定義しましょう。
 そこでは、投資家たる株主が、企業の最終的意思決定者として、強く意識されています。
 では、株主が必要とする情報とは、一体何なのでしょう。教科書的解答は、「高品質な財務報告システムが必要な情報である」となっていますが、「高品質な」とは、具体的に何をさすかと言う事になると、今一つはっきりしません。
 これを、わかりやすい表現で言えば、投資家は「将来の株価」を予測できる情報を欲しているということになるでしょう。そうなのです。皆、「安く買って、高く売って、儲けたい」のです。

そのために投資家は、「将来の価値」予測に役立つような計数を、強く必要としているのです。
この「将来の株価」が、ファイナンスで算定される株主価値と強い関連性を持っていることは自明の理です。

いわゆる株主価値で定義されている株主価値、つまりキャッシュ・フローの塊を現在価値に割引いて、そこから株主価値を出しているものと今の株式市場にでている株価、つまり株価×株数。この両者を比較して割高か、割安かによって、株価は高くなったり、安くなったりするというのが、一つの概念です。
 こう説明すると、ファイナンス学的に非常に座りが良くなるので、よくこのように説明されます。
 次回ではファイナンスからみた株価について説明します。


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【2010/10/29 10:37】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第10回

Q13 株主価値・企業価値とは何か、教えてください。

 株主価値・企業価値とは、どちらも企業が稼得するであろう将来のキャッシュ・フローの合計を現在価値に割り引く、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)をスタートラインとして導き出される価値です。

-DCF法による評価の仕方
DCF法では、会社が有している将来の事業から生み出されると期待されるフリー・キャッシュフローの割引現在価値(A)に、事業に用いられていない手元現金や有価証券等の非事業用資産(B)を加算し、そこから長期負債等(C)を減算して、株主価値を算定する方法です。

株主価値概念の構築化、ストック・オプション導入による企業経営者の株価への信望、ブローカーハウスとしての投資銀行の役割増大、ファイナンシャル・アドバイザリー(FA)役としての投資銀行のM&A推進(FAの報酬は取引高に応じて上がるため、より大型の案件を求める傾向がある)、敵対的買収応戦のための株価上昇政策……。これらの要因が複合的に作用しあい、株価の高値維持を企業目標とするような経営風潮がアメリカに広がっていった事は、想像に難くありません。
 このような恒常的ともいえる株式ブームの中で、一般大衆もキャピタル・ゲインの恩恵を受けたため、株式投資ブームが支持を得る事になり、そこから更に各種の金融派生商品(デリバティブ)の誕生へとつながっていったようです。
 一つの仮説ではありますが、これがアメリカにおいて、一般大衆が株式や投資信託に積極的になっていった流れと言われています。
 ここで再び、「従来の会計」の登場です。


Q14 従来の会計とファイナンス上のDCF法に関連性はありますか。

 フリー・キャッシュ・フローの現在価値というものを計算し、それに手持ちキャッシュ等を加え、そこから借入金等を引く。これがいわゆるファイナンス上の株主価値というものになります。このファイナンス主導の株主価値なる概念を計数的に説明する時にも、スタートラインは会計なのです。つまりファイナンス主導の株主価値を説明するためには、会計の手法を避けて通る事はできません。
 DCF手法で用いる将来のキャッシュ・フローは、会計学で定義している営業利益からスタートして求められます。キャッシュであっても、利益をスタートラインとして計算することになります。
 そこで、キャッシュをうまく説明するために、会計も再構築していくことが要望され始めました。しかし、従来の取得原価主義に基づくフレームワーク、500年前に成立した会計手法では、このような要望に応える事ができなかったのです。
 裏を返せば、資本市場での資金調達方法が中心となり、主たるプレイヤーが投資銀行であるアメリカ型金融資本主義においては、ファイナンスが重要なツールとなり、そのツールに役立つようには従来の会計が構築されていないという事に帰結します。
 これが、「従来の会計」が役に立たなくなってしまった最も大きな理由なのです。

ここでおさらいをすると、従来のP/L中心の会計では、アメリカの一般大衆やCEOが要求する、会社の企業価値(株主価値の類似概念)に関する情報を提供することができなくなってしまったことが、会計の仕組みに変革を迫る最も大きな理由と考えられます。では、株主が知りたい情報とは、より具体的にはどのようなものなのでしょうか。
 それは次回で。
【2010/10/22 12:28】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第9回

Q12 ストック・オプション制度の影響について教えてください。

 ストック・オプションは、もともと1930年代に、アメリカの証券会社によって実用化された制度です。当初はあまり利用されなかったのですが、80年代に入り、当時新興企業だったインテルが、手元の資金が少ない中で優秀な人材を採用する手段として、ストック・オプション制度を積極的に採用したのです。それ以来、ストック・オプション・ブームに火がついて、爆発的に採用されるようになりました。
 株主の観点で言えば、株価がどんどん上がればそれにつれてキャピタル・ゲインを望めますから、経営者もストック・オプションによって、上がった自社株を現金化したくなるわけです。このストック・オプション・ブームが、今までの株式制度の基本概念であった「所有と経営の分離」から「所有と経営の一致」へと回帰させる契機となりました。
 ストック・オプション導入以前のアメリカのCEOは、会社の運営は経営計画によって実行され、自分の報酬もフィディシアリティ(忠実業務)、つまり忠実報酬に従って遂行されるもので、株式市場の動向によって左右されるものではありませんでした。経営者はフィディシアリティに従って会社を経営していくのが目的であって、会社の儲けとは直接関連性はないというのが、それまでの教科書的解答だったのです。前項でも触れましたが、直接会社の儲けと関係ない1980年代までの経営者は、それほど高額な報酬をもらっていませんでした。
 ところが、ストック・オプション導入後は、自分の報酬の一部がストック・オプションで支払われる事になったため、株価に連動して自分の報酬も変わる、つまり経営者の立場に株主の立場が加わる事になったのです。
 よく引用される例として、1998年当時のウォルト・ディズニー、アイズナーCEOの5億ドル(500億円)以上の年収が取り上げられます。
 企業経営者の主眼は、とにかく利益を上げる事に移り、自ら株を取り扱う資本市場の主要プレイヤーである投資銀行の一挙一動に連動するようになっていったのです。

 このように、ストック・オプション制度は、アメリカの企業経営者の経営スタンスに劇的な変化をもたらす役割を果たしました。これがS.O.が20世紀最大の発明と私が考える所以です。
 そして、この頃からファイナンスの世界でも、企業価値、株主価値という概念が徐々に整備されてきたのです。
これについては次回で。

【2010/10/15 10:46】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第8回

Q11 ファイナンスを伝播したアメリカの実情はどうだったのですか。

 アメリカでも同じように、会計上の資産と株式市場の会社の価値とは、それほど連動していませんでした。1980年代までのアメリカでは、一般大衆の株式に対する投資志向は消極的でした。実際、ロナルド・レーガン大統領の頃は、株式や投資などは博打で、資金を投入するのは狂気の沙汰だと言われていたのです。ですから、アメリカで一般大衆が株式や投資信託に注目しだしたのは、実は最近のことなのです。
 この傾向が積極傾向に転じた背景には、種々の理由があります。中でも一つの大きな契機となったのは、1980年代初めにアメリカに吹き荒れた、敵対的買収、乗っ取り屋等によるM&Aブームがあげられます。
 当時、利ざや稼ぎを目的とした買収を免れるため、企業のCEOは株価を上げる事に専念するようになりました。株価を高くしておけば買収されにくいということから、徐々に株価が高くなっていくスパイラルが一般的になりました。そんな中、一般大衆も株が儲かることを知り、一般投資家として株式市場に入り、そうした傾向を下支えしてきたのです。併せて株価を上げるための取引の中で、仲介役としての投資銀行の占める割合が大きくなっていきました
 同じ頃、ファイナンスの世界では「株主価値」という概念が確立されました。簡単に言えば、株価をどんどん釣り上げることによって、会社の価値が高まる、高まると売り買いする人たちにたくさん手数料が入ってくると言う、いわゆるマネーゲームの仕組みができてきたのです。
 ただ、当時の経営者は、まだ会社の株価、利益よりも長期的な企業目標や従業員の雇用、社会への貢献というものに重きを置いていたようです。経営者の年収にしても、平均数100万ドル程度で、専門的経営者として、彼らの年収が株価の上下に直接連動しているわけではなかったので(とは言っても、業績悪化で株価が下がれば、「株主総会で解任」はありえましたが)、日常的に株価を念頭に置くというインセンティブはありませんでした。
 1980年代までの経営者の平均年収は数100万ドルでしたが、今のアメリカの経営者の年収は100億円以上と言われています。そうなった背景として最も大きいのは、いわゆるアメリカのコーポレートガバナンスを変える動きがあったためです。つまり、「所有と経営の分離」という仕組みが破綻したことが最も大きな転換点と言えます。
「所有と経営の分離」は、経営学を学ぶと必ず勉強します。もともと自分たちが株式会社を起業して運営してきたものが、徐々に会社の規模が大きくなるにつれて専門的な経営者を雇い、経営を任せるようになったことから、「所有と経営の分離」が始りました。
 ところが「所有と経営の分離」を「所有と経営の一致」へと回帰させるために生み出された、20世紀最大の発明があります。
 それが何かは次回で。
【2010/10/08 11:25】 未分類 | トラックバック(0) |

IFRSは従来の会計と一体何が異なっているのか 第7回

Q8 会計学とファイナンスで会社の価値は異なるのですか。

 会社の価値をどう算定するかについて、長らく会計学とファイナンスで争いがありました。

 それは、「上場会社の株価と会計学上の純資産に関連性はあるのか」です。
 この答えは「ない」です。
 会計学上の資本価値は、資産から負債を引いたものが純資産=資本で、これがいわゆる会計学上の資本という概念です。
 それに対して、上場会社の価値は何かというと、これは株式(資本)市場で決定される株価です。株式市場の株価は、毎日刻一刻変化しているもので、これに発行済株数をかければ、いわゆる資本市場における会社の価値になります。
 両者のよって立つ考え方がまったく異なるわけですから、一致しないのは当然なのです。
 つまり、株式市場で決定される株価は、ファイナンス理論で言及される株価決定理論と親和性が高いものと言えます。これに対して会計学上の資本は、一旦記帳されると、その後は時価による修正は求められず、名目資本額が維持されるという、全く別の要因で決ってくるのです。
 更に特筆すべき事は、このように会計学で算定される資本額と資本市場(延いてはファイナンス)で算定される株価には大幅な乖離があるにもかかわらず、敢えて会計学上の資本概念を株価に近づけることはなく、会計の資本は株価と別物として、長らくそのような状態にあったということです。


Q9 会計学とファイナンスで会社の価値が異なるのは何故ですか。

 かつて私が大学や公認会計士試験勉強を通じて会計学の授業で「会計学と実際の株式市場での会社の価値概念は何故違うのですか」と聞いても、「それは違うものなんだ」というばかりで、誰も明快な理由を教えてくれませんでした。
 何故、教えてくれなかったのか。この理由は、色々考えられます。
 日本では企業の資金調達に際し、今までは間接金融を主流として、株式や社債を利用する直接金融が盛んではなかったことがあげられます。
 ご存知のように今日でも系列グループによる株式持ち合いや、銀行の株式保有による、安定的株主が常態となっています。その結果、株式本来の利回りである配当性向への関心、ひいては税引前利益への関心が低かったのです。銀行にとっては、長期間資金を借りてくれる事が、彼等の本業である利益源泉となる受取利子を安定的に確保してくれるというメリットがあります。しかも利益そのものも税引前利益より、銀行に対する支払利子余力を示す経常利益に、より強い関心をもっていました。
 つまり、間接金融が主流であったため、資本市場で資金を調達することが、それ程ポピュラーではなかったのです。そこに株式持ち合いという日本独特の仕組みが加わり、資本市場における正しい配当利回りの認識が行われていませんでした。
 例えば、今でも経営者の中には、資金調達コストの方が銀行借入の資金コストより安いという誤った認識を持っている方がおられます。会社の経営がおかしくなれば、最悪、紙切れになってしまう恐れがある株式の方が、リスクマネーの点からは銀行借入よりも調達コストが高いのは、冷静に考えれば当り前の理屈です。株式持ち合いという特殊事情の中で、極めて低い配当性向と言う、事実としての資本市場に慣れてしまったために、このようなファイナンスの理論と不整合の実態になっていたのです。
 そこでの会計は、会社法(もしくは商法)の規定と税法の規定を刷り合わせながら、もっぱら取得原価主義と期間損益計算に基づいて、あくまで忠実に利益計算を行う事が主な役割でした。即ち資本市場で決定される株価と会計により算定される利益、資本額とは、一義的な関連性はなかったのです。このような理由から「それはそういうものである」と、会計を取り巻く実務家、学者その他関係者も、この状況を看過してきた節があります。
 結論を言えば、ファイナンスと会計学はお互いに仲が悪く、会社の価値を巡っても20年間ほど決着がつかなかったのですが、最近「会計が負け、ファイナンスが勝ち」に着地したようです。ただし会計には500年の歴史がありますから、また引っ繰り返るかもしれませんが、現段階ではファイナンスが勝っているという事なのです。


Q10  日本において、会計学上の資本概念が株式市場での会社の価値と無関係でよいとされてきた理由を教えてください。

 これはファイナンスと会計の勝敗に起因していますが、実はファイナンスの勝利となった、もう一つ大きな理由があります。それは「日本はアナリストが強くなかった」からです。
 アメリカの資本主義はアナリスト資本主義と言われるほど、アナリストがかなりの位置を占めています。IFRS推進にも彼らの力が大きく働いていると言われています。
 日本では、敢えて象徴的に言うならばアナリストが強くなかったということもあって、「会計学上の資本概念が、たとえ上場企業であったとしても、株価と無関係でよい」と考えられていたのです。

 以上のように、我国の例では、銀行による間接金融が主流、株式持ち合いの常態化、会計は商法と税法の三位一体で考える、そして「アナリストが強くなかった」ことから、「株価の変動と会社の業績とがそれ程連動していなかった」のです。


 次回は、本家アメリカの事情について考えてみます。
【2010/10/01 12:23】 未分類 | トラックバック(0) |

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