第3回
授業の進め方
授業の形式を説明しますと、階段教室で予め座席は指定されています。MBA学生の場合は毎回、教授が学生に質問し(古い映画でペーパーチェイスというハーバード・ロースクールを題材とした映画があったのですが、この方式はソクラテス・メソッドというそうです)、とりわけハーバード、スタンフォード両大学はこの形式で有名だったと記憶していますが、本プログラムはそれなりに年を取り実務上の経験も積んでいるおじさん達が生徒であり、あまり厳しくやって、翌年以降同一企業から後続者がいなくなると困るという営業政策上の配慮もあってかないのか、そのような形式でなく淡々と授業は行なわれました。ただし、いつでも生徒からの質問は受け付けるというか、勝手に生徒が質問し、適宜、教授がそれに答えるという、進め方は米国の大学のしごく一般的なものでした。
アメリカはプラグマティズムの国ですし、今回はファイナンスのテクニック的なことが授業の内容なので、哲学的な主題ともなる株主主権の話は授業では勿論なかったのですが、折に触れ、そのような点に関する考え方が伺われるような講義内容ではありました。
肝心な講義内容ですが以下が具体的な内容でした。技術的なお話しをするのが拙文の目的ではないので、必要最低限のコメントをします。
借入政策の是非
資本市場で社債を発行するのはどういう局面で行うべきか。これは資本コストという概念からいうと借入金で資金を調達したほうが株式を発行するよりも安いコストで調達可能であるが、あまりに借入金を増やすと、倒産リスク等がでてくるため、経営者もしくはCFOは常に両者のバランスに目配りしながら借入比率を考えなさいというもので、モダンコーポレートファイナンス理論の中心をなす議論のひとつです。
配当政策の是非
配当政策の要旨は過去と将来の収益力、手元流動性、配当率に対する資本市場の反応、他競争者の動向等々を考慮して決めなければならないというものでした。
自社株買いのファイナンス的効果
配当政策に関連した論点です。
オプション理論
コールオプション、プットオプション、リアルオプション等の理論的説明。数学的な部分が多く、最も難しい部分であり、受講生もあまりわかっていないようでした。
LBOの説明
わが国でも盛んになってきた被買収会社の資産を担保にしたローンを組み、自らの出資部分と合わせて公開会社を買収。その後、資産売却等のリストラをして経営効率を高め(?)、会社の時価を上げた時点で再上場して売り抜けるというおなじみのスキームの説明。
ジャンク債
結果的には収監されることになったウォートンMBAのマイケル・ミルケン氏が学生時代に発見した倒産確率と資金調達コストの相関関係に着目して、一時、そして現在も続いているいわゆる投資適格性を欠く会社の資金調達手段。
株式市場と情報に関する相関関係
株式市場は果たして効率的かどうかという、アメリカ人が重視する株式市場に対する実証的な研究の説明。
資本市場にしめる会計の役割
最近のグローバリゼーションに対する会計の果たす役割の説明。
概略、以上のような内容がケーススタディ5割、講義形式5割で進められていくのですが、やはり看板大学の教授を長年張っているだけに授業はすこぶるおもしろく、文字通り時間をたつのを忘れるようなスピード感のある授業でした。スタンフォードのことは知りませんが、ウォートンでは、当時から最終講義が終わると、学生に先生の教え方に対するアンケート(むしろ評価表というほうが適切)を配って回収し、次回の講義に生かすということだったので、スタンフォードも同様な試みをやっているのでしょう。
というのが授業の内容でしたが、次回はその感想を述べましょう。
